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療育研究室
「見通しが立つ、立たない」を体験してみよう!
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「見通しが立たない状況では、見通しを立てようと行動を起こしてしまう。それが問題ある行動が発生する1つの理由である。」
⇒「見通しの有無が行動の問題をなぜ引き起こすのか」を知りたい方は、こちらをお読みください
【自分や他人やモノを叩くのは「見通しが立たないこと」が原因??】(別記事)
見通しを立てることの大切さをご理解いただいたら、次は「見通しが立っている状況と立っていない状況とは、どういう状況なのか」を理解してみましょう!
それには、実際に体験していただくのが最も効果的です。
以下の体験プログラムを通して、見通しに対する理解を深め、お子さんとのコミュニケーションに役立てていただければ幸いです。
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実施内容
A「目隠し」または「目をつぶり」、家の中を2分歩いてください。
B「目隠し」または「目をつぶり」、公園など安全な家の外を2分歩いてください。
C「目を開けて」、①と②と同じところを好きに歩いてください。
※室内、室外に限らず安全上の確保は必ず行ってから実施してください
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皆さん、実施してみていかがだったでしょうか?
すべての方が、Cが最もスムーズに歩けたのではないでしょうか?
次に歩きやすかったのは、Aではなかったでしょうか。
まだ歩きやすいと感じられた理由は、「どこに、何が、いくつあり、そこまでは自分の歩幅だと大体どれくらいの距離で着き、その道のりが安全か、途中で何かが飛び出してこないか」など、普段の生活の中で覚えていた記憶が手助けになっておおよそ推測できるためです。
具体的には「家の配置を覚え、その記憶を呼び出す力」「その記憶にある配置と自分の歩幅と現在位置に注意を向け、その注意を向けることを集中して行える力」「耳を澄まして周囲の音を聞く力」などが備わっているからです。
一方で、Bはそうした推測がほぼできないため、極端な人ならば数歩で動けなくなり、「ここはどこ?動いて大丈夫?」という不安が高まり、それが強いストレスへと変わり、「誰か助けて!と叫びたくなるような心理状態」となり、「もう嫌だ!辞めたい!逃げ出したい!」という行動を起こしたくなる手前の状態になるかと思います。
「見通しが立たない状況」とは、まさにBの状況です。
ちなみにCが最もスムーズに歩ける理由ですが、それはシンプルです。
【目で必要な情報を集め、それを脳内で整理(状況判断)し、安全な動作指示の下に行動できる】からです。
目を開けているかどうか、対象をきちんと見られているかどうかだけでも、見通しを立てる力が発揮しやすくなることがわかるかと思います。
そして、
「見通しが立たない状況では、大人であっても不安に陥り、ストレスの負荷が高まり、パニックに陥りやすくなる」ことも体験できるかと思います。
つまり、見通しの有無は心理状況に影響を与え、自分の行動を大きく変えるのです。
では、どうしたらお子さまに見通しを立ててあげられるか。
その答えもまたシンプルです。
「お子さまの立場に立って、その視点で見通しを立てるために必要な情報を提供すること」です。
さきほどのBの例で言えば、
信頼できる人物に手を握って案内してもらったり、口頭で指示を出してもらうだけでもかなり安心して動けるようになるはずです。
しかしそれでも、「とりあえず真っ直ぐ進めば大丈夫だよ」など、抽象的な指示では、安心感は高まらず不安は続きます。
【身体の正面の方向に向かって肩幅の歩幅で4歩だけ進めば安全なエリアに入るよ】と具体的に言われたら、安心できるはずです。
このように、まず「人間関係の信頼」が先に来て、その後に具体的な指示などがきて、ようやくしっかり見通しを立てて動けるようになります。
いかに正確な指示でも、赤の他人では、その指示は受け入れられず、不安は取り除かれません。
発達高度療育センターでは、なぜ人間関係つくりを最初にする必要があると必ず伝えているのか、ご理解いただけるかと思います。
そしておまけとして、
「信頼できる人に、具体的な指示をもらう」ことは理想であり、現実社会ではほぼ不可能です。そこまで丁寧に優しく根気強く接しくれる人は多くありません。
現実社会は、「信頼できる人でなくても場面によって信頼し、抽象的な指示でも自分で推測して行動する」ことが求められます。
だから発達高度療育センターでは先生が定期的に変わりながら支援を行います。
そうすることで、どんな大人の指示でもしっかり受け入れて降り組むことができるようになるからです。