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療育研究室
自分や他人やモノを叩くのは「見通しが立たないこと」が原因??
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障害福祉の業界でよく使われる「見通しを立てる」という行為。
そもそも見通しとはいったい何で、なぜこれほどあちこちで使われているのでしょうか?
まず見通しとは、「物事のなりゆきや、将来を予測すること」を言います。
人間の脳が発達するにつれて、記憶や論理的思考など神経心理学における高次の認知機能が成長していくことで、ようやく見通しを立てる力(推測力)が発揮できるようになります。
しかし、脳の発達過程に何かの理由でトラブルがあると、推測力を上手く発揮できない状態となり、それにより「見通しを自分で立てるのが苦手」になるというわけです。
⇒「見通しが立つ、立たない」というのが、どういうことなのか実際に体験してみたい人は、こちらをお読みください
我々は、日常生活において見通しを立てながら生きているので、見通しが立たない状況というのを実感しにくいですが、見通しが立たない状況では、どんな人でも不安に陥り、見通しを自分から立てようと働きかけます。
例えば、「老後を考えたら、見通しが立たなくて不安だから、しっかり貯金しておこう」と考えるのも同じことです。
我々が何年、何十年先についてそう不安に思うように、見通しを立てる力が乏しい子の場合は、数分先、さらには数秒先の未来に不安を感じているのです。
そして見通しがないことで抱える不安を取り除くために、彼らは見通しを立てられる行動を起こすのです。
自傷行為:【自分の頭を叩けば、必ず同じような痛みを感じることができます。】
他傷行為:【人を叩けば、叩かれた人の多くは「やめなさい!」「ダメでしょ!」など怒った雰囲気と表情で、叩いたことを叱りつけます。】
他害行為:【モノを投げたり、叩いたりなど他傷行為のモノ版で、同じように「ダメでしょ!」など叱られます。】
このように「同じような反応が返ってくる率が極めて高い行動」を起こすことで、見通しがない状況から抜け出そうとしているのです。
「見通しがない」 ⇒ 「見通しを立てる行動を起こす」 ⇒ 「いつも同じ反応が返ってくるから見通しが立つ」
これは応用行動分析学における「ABC分析」を用いた「本人の行動と周囲の環境の反応により引き起こされる行動問題」として研究されています。
しかし、応用行動分析によりこうした見通しに関連した行動問題は解決することができますが、見通しの有無とは無関係なところから発生する場合には、本人の症状から出る不随意運動や原始反射(無意識に起こる行動)が関係していることが多く、それに対しては神経心理学的な脳の機能改善など本人への治療的支援を別途行うことが並行して必要になります。
応用行動分析学や神経心理学については、また別の記事で詳しく説明しますが、
大切なことは、
「自傷・他害・他傷行為については、したくないけど仕方なくしていることがある」という事実を知っておくことです。
その上で、なぜその行動を本人が取ってしまうのか、なぜこの行動を本人が行い続けてしまうのか、など本人と周囲の関係について一つ一つ確認して整理していくことが、解決する最も効果的な第一歩になります。